CASE.4
プラットフォーム:IBJメンバーズ
居住地:東京都
年齢:36歳
職業:経営者
①事前リサーチで見えた成功者の姿
婚活を続けていると、時々パンチの効いた相手に出会う。
今回のお見合い相手は、なんとニュース番組で特集されたこともあるベンチャー企業の女社長。
骨董品を再生する事業を手掛けており、年商もなかなかのものらしい。
実は、俺はお見合い前に名前をネット検索して、すでに彼女の会社を特定していた。
社長の名前で検索すると、会社のホームページにバッチリ写真付きで載っているではないか。
「ふむ、これはなかなかの成功者……もしかして、悠々自適な主夫生活、アリなのでは?」と甘い夢を抱く。
だが、それだけではない。
(この会社、俺が引き継ぐのもアリなんじゃないか?)
密かに「主夫」ではなく、「社長夫」として経営に関わる未来まで妄想していたのだった。
②期待と共にお見合いスタート
とはいえ、事前リサーチ済みとは悟られないように、初対面のフリをしながらお見合い開始。
「はじめまして、ゆうパパです」
(※いや、あなたのことは既に調査済みです…!)
話を聞いてみると、彼女は超合理的な経営者。
しかもトリリンガル。ビジネスでは英語と中国語を駆使して海外ともやりとりをしているらしい。
対する俺の言語スキルは……日本語オンリー。
漢字が難しい漫画はちょっと読むのが遅い。うん、明らかに格上の相手である。
「パートナーには何を求めるんですか?」と尋ねると、「精神的な支えになれる人」とのこと。
(……これ、主夫ワンチャンいけるのでは?)
だが、俺の手持ちスキルはエンタメ、ゲーム、漫画の知識のみ。この圧倒的戦力差をどう埋めるか?
③俺の壮大な主夫&社長計画
ここで俺は思い切って勝負に出た。
「料理? まぁ、これから勉強する予定です!」
「家事? 掃除機くらいはかけられる気がします!」
「でも、あなたの支えになります!(方法は未定)」
「食事管理、俺がやります!(レトルト含む)」
「仕事で疲れたとき、リラックスできるようにします!(たぶん)」
「会社の広報戦略、一緒に考えます!(AIに聞きながら)」
「トリリンガルは無理だけど、漫画の知識なら負けません!」
「ゲームのeスポーツ戦略なら任せてください!」
「主夫として全力であなたをサポートします!(できる範囲で)」
我ながら完璧な提案だと思った。相手が経営者なら、サポートに徹するのがベストなはず。
いや、もっと言えば、会社のことも手伝いながら、徐々に経営に関わる道筋をつけていけば……?
(これ、最終的に俺が社長になる流れでは??)
④領域展開、完全敗北
だが、彼女は少し困ったように笑った。
その瞬間、彼女の周りに見えない結界が張られた気がした。
これは……領域展開!?
彼女の完璧な論理とトリリンガルの流暢な言葉により、俺の全ての攻撃(主夫プレゼン)は無効化された。
「えっと……ごめんなさい、それはちょっと違うかも」
「えっ?」
「私、バリバリ仕事はしてるけど、プライベートではもっと刺激が欲しいのよね」
「えっ?」
「なんか……支えようとしすぎて、ちょっと重いかも」
「えっ?」
「あと……家事できないのに主夫志望って、どういうこと?」
「えっ?」
「それと……eスポーツと漫画の知識は、正直あんまり興味ないかも」
「えっ???」
「必中の術式だと……!?」
プレゼン、大失敗。術式の発動により、俺の計画は全て霧散した。
⑤俺の野望、再生不可
結局、骨董品は再生できても、俺の婚活プランは再生不可だった。
主夫への道も、社長への道も、想像以上に険しい……。
とりあえず、まずは料理の練習から始めるか……。(でも、Uber Eats って最強だよな?)